「表面利回りとか、実質利回りとか、よくわからないからしっかり理解したい」
「不動産投資の利回りって、高いほどいいんだよね?」
不動産投資を始めたばかりの初心者にとって「不動産投資の利回り」は、もっとも高い関心を持つものでしょう。
なぜなら、利回りによって利益が出るか出ないかが決まってくるからです。
しかし、ベテランの不動産投資家は、利回りは高ければ高いほどいいわけではないと言います。
そう言われると、混乱してしまいますよね?
なぜなの?どうして?という疑問も生まれます。
そこで、この記事では、不動産投資の利回りの基本的な知識である
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表面利回り
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実質利回り
の解説から、
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投資用不動産の利回りの目安と相場
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利回りに振り回されずに物件を選ぶ方法
まで、くわしくご紹介します。
ぜひこの記事を読んで、利回りという言葉に惑わされずに、確実に利益が出せる物件を入手してください。
1.不動産投資の利回りとは?利回りの基礎知識
まず最初に、不動産投資の利回りの基礎知識について学んでおきましょう。
不動産投資の利回りは2種類あります。
・表面利回り
・実質利回り
確実に利益を出すためにも、きちんと基礎知識を身につけてから、物件選びを行なってください。
1-1.表面利回りとは?
〈表面利回り〉とは、物件の価格に対してどの程度の家賃収入が得られるかという「表面的な収益性」を表す数値のことを指します。
【表面利回りの計算式】
表面利回り(%) = 想定される年間家賃収入÷物件購入価格×100
実際に計算してみましょう。
(例)
購入物件価格:2,000万円
家賃:月10万円
表面利回り=10(万円)×12(ヶ月)÷2,000(万円)×100 = 6%
この利回りが高ければ高いほど収入は増える…と思いたいところですが、実際のところ、物件を購入する費用以外にも多くの経費がかかっています。
物件を購入する費用以外の経費まで含めて利回りを計算したものが、次の章で解説する「実質利回り」です。
1-2.実質利回りとは?
〈実質利回り〉とは、マンション投資にかかる経費等を含めて計算した、実質的な利回りを指します。
表面利回りだけ見ると収益率が高く見える物件でも、実質利回りで見てみると、実は利益があまり出ないことがわかったりします。
【実質利回りの計算式】
実質利回り(%)
=(想定される年間家賃収入-年間運営経費)÷(物件の購入価格+購入時の諸経費)×100
【賃貸運営に掛かる費用内訳】
- マンション管理費・修繕積立金
- 固定資産税
- 賃貸管理費(管理会社への支払い)
【物件購入時にかかる諸経費内訳】
- 仲介手数料
- ローン手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 火災保険料、リフォーム代など
ワンルームマンションの場合、購入時の諸経費は物件価格の約7%~8%程度、運営費は家賃収入の約25%前後と言われていますので、先ほどの例で計算し直してみましょう。
(例)
購入物件価格:2,000万円
購入時諸経費:140万円
家賃:月10万円
年間の運営費:30万円
実質利回り=(10万円×12ヶ月−30万円)÷(2,000万円+140万円)×100 =約4.2%
表面利回りでは6%でしたが、実質利回りで計算してみると4.2%となりました。
不動産投資を始める場合は、表面利回りではなく実質利回りで必ず試算してから購入物件を決めることが重要です。
さらに、空室期間の発生や突発的な修繕費の支出等、リスクがあることも想定しておくことも必要です。
投資用不動産物件を紹介するサイトなどでは、表面利回りを掲載していることが多いので注意が必要です。
2.投資用不動産の利回りの相場と選ぶ目安
不動産投資の利回りについて基礎的な知識を学びましたので、次に利回りの相場と物件を選ぶ際の目安について解説します。
物件を選ぶ際の利回りの目安ですが、不動産投資の失敗を回避するためにも、初心者は利回りの高さに惑わされず、長期的に利益を出すことを最優先に考えることをおすすめします。
2-1.投資用不動産の利回りの相場
まずは、日本不動産研究所の不動産投資家調査の結果を見てみましょう。
出典:日本不動産研究所 「第40回 不動産投資家調査(2019年4月現在)」
http://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2019/05/55cfc65f3c8677e103dea6ef2e7f9d13.pdf*期待利回りとは、投資家が不動産から期待する利益のことを言います。「これくらいの利回りがあれば利益が出せる」と考えている数値と言えます。
2019年4月現在、賃貸住宅一棟(ワンルームタイプ)
エリア | 期待利回り |
城南地区 |
4.3% |
城東地区 |
4.5% |
投資用不動産の利回りの相場は、その立地条件や物件スペック等によって大きく変わりますが、上記の地域は日本有数の不動産価格が高騰しているエリアであり、物件の購入価格が高くなりますので、利回りは低くなる傾向があります。
ちなみに都心部の区分マンションのおおよその平均利回り(表面利回り)は以下のようになっています。
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新築: 4%後半~5%前後
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中古(築20年程度):4.5~6.5%
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中古(築20年以上築35年くらいまで):7%~10%
新築物件の利回りが低いのは、購入時にかかる費用が高額になるからです。
物件は古くなるにつれて購入価格が低くなるので、表面利回りは高くなります。
しかし、古い物件は築年数に比例して管理費や修繕費が高くなり家賃収入も少なくなります。
さらに空室リスクも高くなることを覚えておきましょう。
一方地方の利回りは以下のようになっています。
政令指定都市 |
期待利回り |
札幌 |
5.5% |
仙台 |
5.5% |
横浜 |
5.0% |
名古屋 |
5.1% |
京都 |
5.2% |
大阪 |
4.9% |
広島 |
5.8% |
福岡 |
5.2% |
地方の場合、物件価格が都心部に比べて割安になるので、利回り自体は高くなります。
しかし、空室リスクは都心部よりも高くなるため、満室を前提として利回りを考えることが難しいという現状があります。
利回りだけを見れば、地方の物件を選んだほうが利益が出せると思うかもしれませんが、初心者はできるだけ空室リスクの低い都心部のマンション等を選んだほうが失敗しません。
2-2.投資用物件を選ぶ際の利回りの目安
2-1.でご紹介した、調査結果からわかったことをまとめると、以下のようになります。
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物件価格が安くて、家賃が高ければ利回りは高くなる
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新築物件は利回りが低く、物件が古くなればなるほど利回りは高くなる
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都心部より地方のほうが利回りは高くなる(物件価格が安いため)
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高い利回りでも、空室リスクが高ければ利益を出すことは難しい
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日本国内トップクラスの不動産価格が高額なエリア(城南地区)の期待利回りは4.3%
上記の項目から総合的に判断すると、投資用物件を選ぶ際の利回りの目安は4%前後となります。
しかし、空室リスクが低く継続的に家賃収入が得られるような優良な物件であれば、もっと低くても(3%程度)投資用物件として購入を検討していいと言えます。
その理由と利回りに振り回されずに物件を選ぶ方法は3章でご紹介します。
3.利回りに振り回されずに物件を選ぶ方法
不動産投資の場合、利回りの高さで物件を選んだからと言って必ずしも利益が出せるというわけではありません。
なぜなら、利回りの高い物件であっても、賃貸需要が低い物件であれば空室リスクが高まり、結果的に利益を出すことはできないからです。
一方で、実質的な利回りは低くても、賃貸需要が高くて入れ替わりのサイクルが短く、空室期間がほとんど出ないような物件であれば、コンスタントに利益を出し続けるので、長期的に見たときには優秀な物件と言うことができます。
そこで、利回りに振り回されずに物件を選ぶ方法についてご紹介します。
利回りだけで物件購入を決めるのは非常に危険ですから、必ず物件の条件を確認するようにしてください。
3-1.利回りが高くなくても購入を検討したい物件の条件
利回りが高くなくても購入を検討してもいい物件の条件は以下のようになります。
できれば、(1)〜(3)全ての条件に当てはまる物件がベストですが、そこまで好条件の物件はなかなか見つからないと思われます。
優先順位の高い条件からご紹介しますので、最低でも(1)の条件はクリアしている物件の購入を検討しましょう。
(1)立地条件が非常に良い
賃貸需要の高さは立地で決まると言っても過言ではないでしょう。
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東京は23区内、地方であれば政令都市の中心部など、賃貸需要の非常に高いエリアにある物件
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最寄駅から近い(徒歩10分以内、できれば5分以内がベスト)
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物件周辺の利便性が高い(コンビニ・スーパー・公共機関まで近距離)
などであれば、利回りがそれほど高くなくても、資産としての価値が高いので購入を検討してもいい物件です。
(2)築年数が比較的浅く、1Rでなく1Kタイプ、バス・トイレ別の物件
(1)の条件に加えて、
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築年数が浅い
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1Rでなく1Kタイプ
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バス・トイレ別
といった条件の物件は、賃貸物件を探している人から人気が高いので、入居者がすぐに見つかりやすいというメリットがあります。
退去者が出てもすぐに次の入居者が見つかるので、空室リスクも低いのでおすすめです。
(3)上層階や角部屋等、他の部屋と比較した場合に付加価値がある
さらに、(1)と(2)に加えて
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上層階
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角部屋
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他の部屋と比較した場合に付加価値がある部屋
といった条件も加われば、非常に人気が高い部屋になりますので、入居者探しに苦労することもなく、空室リスクを心配することも少ないので、購入を検討すべき物件といえます。
3-2.利回りが高くても避けたほうがいい物件の条件
利回りが高くても避けたほうがいい物件は以下のようになります。
基本的には、3-1.の逆の条件の物件と考えればいいでしょう。
地方の物件、駅から遠い物件など立地の悪い物件
立地のよくない物件は、どんなに利回りが良くても手を出すのはやめておきましょう。
ちなみに地方の物件ほど利回りが高くなる理由は、物件価格が低いためです。
都心部の場合は、物件価格自体が高額なので、全体的に利回りは低くなっています。
旧耐震基準で建てられた物件
不動産投資家の初心者は中古物件からスタートしたほうがいいとよく言われていますが、あまりにも古すぎる物件は避けましょう。
耐震基準の大幅な見直しが1981年6月に行われ、それ以前を旧耐震基準、以降を新耐震基準と呼んでいます。
旧耐震基準の物件は、1981年6月以前に建てられた築古の物件ということです。
そのため、購入価格が低くなるので利回りは高くなります。
しかし、あまりにも古い物件は耐震性・耐久性に不安があり、もしもの際に倒壊してしまう恐れもありますし、仮に家賃を低く設定したとしても入居者がつくかどうかもわからず、空室リスクも高くなります。
管理状態の劣悪な物件
こんな部屋に誰が住むのだろう?と思ってしまうような見た目の悪いボロボロの物件は、当たり前ですが、人気がないので入居者を見つけるのに苦労します。
修理したりリフォームしてキレイにしてから賃貸活用すればいいと思うかもしれませんが、管理が悪かった物件は想像以上に蝕まれていることが多く、修繕費用も高額になる傾向があるので避けましょう。
管理費・修繕積立金が高すぎる物件
管理費と修繕積立金が高すぎる物件の場合、そのぶんの売買価格を下げて、一見、高利回りに見せていることがありますから、よく注意してください。
また管理費等が高いと売却時の価格を下げなくてはいけなくなるというデメリットもあります。
借地権物件
借地権とは、地代を払って他人の土地を借りることのできる権利です。
建物は購入して所有できますが、土地は借りるだけになります。
借地権物件は地主がいるので毎月土地代がかかり、土地賃貸借契約更新時には更新料もかかります。
不動産投資の初心者には扱いが難しすぎるので、借地権物件の購入は避けるようにしてください。
4.まとめ
不動産投資には、表面利回りと実質利回りの2種類があります。
また、利回りは高ければ高いほど利益が出せるというわけではなく、空室を出さずに継続的に家賃収入が得られる物件が優良物件であると言えます。
ここで、利回りは低くても購入を検討したい物件の条件について復習をしておきましょう。
(1)立地条件が非常に良い
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東京は23区内、地方であれば政令都市の中心部など、賃貸需要の非常に高いエリアにある物件
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最寄駅から近い(徒歩10分以内、できれば5分以内がベスト)
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物件周辺の利便性が高い(コンビニ・スーパー・公共機関まで近距離)
(2)築年数が比較的浅く、1Rでなく1Kタイプ、バス・トイレ別の物件
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築年数が浅い
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1Rでなく1Kタイプ
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バス・トイレ別
(3)上層階や角部屋等、他の部屋と比較した場合に付加価値がある
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上層階
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角部屋
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他の部屋と比較した場合に付加価値がある部屋
利回りの高さに惑わされずに、確実に利益を出せる物件を購入するようにしてください。
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